お知らせ

スタッフブログ

2020.07.17

「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に、一体何が変わった?②

契約不適合責任においては、代金減額請求は一般的な責任追及方法となりました。ただし、責任を追及する側(買い主)が責任を追及される側(売り主)に対して、期間を定めて履行の「追完」を催告し、その期間内に履行がなされないといった手続きを踏む必要があります。

追完とは、契約内容に適合していない部分に関して、後から契約内容に適合しているように契約内容を履行することをいいます。つまり、不完全だった契約部分に関し、後から完全に契約に合うようにすることをいいます。

民法改正前は、瑕疵担保責任における責任追及手段は損害賠償請求が中心であり、代金減額請求ができるケースは限られていました。

しかしながら、民法改正後は、契約不適合責任として、損害賠償請求だけでなく、代金減額請求もできることとなり、責任追及する側としては選択肢が増えました。民法改正前も、代金減額請求は紛争の解決の際の和解において用いられてきましたが、あくまで当事者間の合意が必要でした。

それに対し、民法改正後は、責任追及する側が代金減額請求を選択した場合、責任追及される側はそれに応じなければならなくなったため、紛争の解決の幅が広がったと言えます。

責任追及方法 2.損害賠償請求

瑕疵担保責任と同様に、改正後の契約不適合責任であっても、損害賠償請求をすることができます。ただし、それぞれ要件と内容が異なります。

瑕疵担保責任の場合、損害賠償請求をするためには、責任追及をされる側の帰責性(契約違反に関する故意・過失)は不要とされており、また、損害賠償の範囲も信頼利益(契約当事者が、契約が有効であると信頼したために生じた損害)に限定されていました。

それに対し、契約不適合責任において損害賠償請求をするためには、責任追及をされる側の帰責性が必要とされており、また、損害賠償の範囲は履行利益(契約が履行されていれば、転売などによって得られた利益。ただし、契約不適合の内容と損害との間に相当因果関係が必要)まで認められるようになりました。

ここでいう「帰責性」とは、契約違反に関して故意又は過失があることを指します。例えば売り主Aが建物を売却し、その建物に欠陥があったとしましょう。この時、

欠陥があってそれを知りながら隠していた場合→悪意(1)
欠陥があってそれを知らなかった場合→善意

となります。この善意については、

欠陥を知らなかったことに過失あり→善意有過失(2)
欠陥を知らなかったことについて過失なし→善意無過失(3)

となります。

契約不適合責任においては、(1)と(2)の場合は損害賠償を含む責任追及ができ、(3)の場合には責任追及ができません。

責任追及される側の帰責性が要求されることによって、損害賠償請求のハードルが上がったと言えます。ただし、損害賠償の範囲が広がったというのは、責任を追及する側からすれば、メリットでしょう。

責任追及方法 3.契約解除

瑕疵担保責任において、契約解除はその瑕疵によって契約の目的が達成できないなどといった限定的な場面でしか認められませんでした。

例えば、土地売買において、100平米未満の土地には自宅建築ができない条例のある地域において、売り主Aと買い主Bが自宅建築の目的で100平米の面積の土地の売買契約したところ、売買対象となった土地の面積が実際は90平米であり、売り主Aが地続きの10平米の土地を買い主Bに売却できない場合、買い主Bは自宅建築という目的を達成することができません。このような場合に限って、買い主Bは売買契約を解除することができました。

それに対し、契約不適合責任においては、一般的な法定解除(改正民法541条)の要件を満たせば、契約解除をすることができます。

例えば、売り主Aと買い主Bが5000万円の土地の売買契約をし、2020年6月末に土地の登記移転に必要な書類の引き渡しと売買代金の支払いが予定されていたとしましょう。

ところが6月末になっても買い主Bが5000万円を支払わなかったため、売り主Aが買い主Bに対して、10日後である2020年7月10日までに代金を支払うように求めたにもかかわらず、買い主Bが支払わなかった場合、売り主Aは、この売買契約を解除することができます。

なお、売買契約においては多くの場合、契約の解除に関して特約を設けていますので、上記のような形になることは少ないでしょうが、あくまで、法律が予定している状況は、上記のとおりです。また、民法541条ただし書きにおいて、債務不履行が軽微な場合の契約解除は制限されていますので、注意してください。

なお、改正前民法では、法定解除においても、解除される側の帰責性(契約違反をしたことについての故意・過失)が要求されていましたが、改正民法では、解除される側の帰責性は要求されなくなりました。

契約当事者を早期に契約の拘束力から解放することに重点を置いた改正と言われています。

責任追及方法 4.追完請求

瑕疵担保責任においては、追完請求権は認められていませんでした。それに対し、契約不適合責任においては、一般的な請求権として認められるようになりました。なお、上述のとおり、追完請求権は、代金減額請求権の行使の前提となります。

追完請求権が認められることによって、上述の代金減額請求権同様、紛争解決の幅が広がったと考えられます。

期間制限も変更に

瑕疵担保責任においては、責任追及する側が瑕疵を知ってから1年以内に権利行使をしなければなりませんでした。

それに対し、契約不適合責任においては、責任追及する側が契約不適合を知ってから1年以内に種類又は品質の不適合の通知をすれば足ります。また、責任追及される側が契約不適合について悪意(知っていること)又は善意重過失(知らなかったとしても、知らなかったことに重大な過失があること)の場合には、期間制限は撤廃されます。

責任追及する側からすると、1年の期間制限内に行うことが軽減されますので、メリットといえるでしょう。

契約不適合責任で「免責」は変わるか?

改正前民法においても、瑕疵担保責任の免除特約や限定特約は契約書に定められていることが多かったです。

中古物件などで売り主が個人である場合には、「引き渡しから3カ月間に限り瑕疵担保責任を負う」「瑕疵担保責任は負わない」などのように、瑕疵担保免責などとして特約を付けるケースが一般的だったかと思います。

改正民法においても、改正前民法と同様、契約不適合責任の免除特約や限定特約は有効と考えられます。

まとめ

・民法改正によって、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変化した

・「隠れた瑕疵」という概念は無くなり、責任追及をしやすくなった

・契約違反に関して、責任追及される側に故意または過失がある場合でなければ損害賠償請求ができなくなったため、損害賠償請求をする時のハードルは上がった

・契約不適合責任の免責は特約などによって変わらず有効と考えられる

実務上はほとんど影響はないものの

今回のコラムでは、改正前民法の瑕疵担保責任と改正民法の契約不適合責任とを比較して解説してみました。

代金減額請求、追完請求が一般的な請求権として認められるようになったり、契約解除の場面が増えたりといった違いもあります。

しかしながら、代金減額請求や追完請求は、あくまで契約当事者の紛争解決のための選択肢の1つです。

以前から紛争の調整の過程でも代金減額請求や追完請求が行われてきたことからすれば、実務への影響がそれほど大きいということはないと考えられます。

契約解除についても、紛争の当事者となってしまった者同士の契約を継続していくことはあまり意味がなく、以前から、契約の解除や合意解除などは行われていました。このことからすれば、契約の解除の可能性が広がったことも、実務への影響がそれほど大きいということはないと考えられます。

民法が改正され、契約不適合責任になったことで、実務上、最も大きく変わるのは、損害賠償請求をする際に、責任を追及される側の帰責性を要求するということでしょう。改正前民法においては、瑕疵担保責任は無過失責任と解されており、責任を追及される側の帰責性は要求されていませんでした。今後、責任を追及する側は、責任追及される側の帰責性を主張立証しなければなりませんが、その点が負担となる可能性があります。

お役立ち情報一覧へ
Fudousan Plugin Ver.5.3.3