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2020.05.27

コロナの影響で工事が中断・遅延したら

アパートの建築工事やリフォーム工事を請け負った建築業者が請負契約を中断したり、請負契約に沿った期間に工事を完了させられなかったりした場合、原則として、建築業者に責任があると判断されます。

さらに建築工事の中断や遅延によって、発注者(不動産オーナー)に損害が生じた場合、建築業者は、建築工事の中断や遅延と因果関係のある損害を賠償しなければなりません(民法415条)。

しかしながら、新型コロナウイルスの流行は、発注者(不動産オーナー)にも建築業者のいずれにも責任はなさそうに思えます。そのような場合、不可抗力または無過失として建築業者は損害賠償責任を負わなくても良いのでしょうか。

不可抗力と無過失とは

○不可抗力

「不可抗力」とは、天災地変のように人力ではどうすることのできないこと、外部から生じた障害で通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしても、なお、防止し得ないものなどといわれています。

契約においても、天災などを例として契約における不可抗力がどのようなものかということを定めていることが多いです。

○無過失

契約当事者の一方に債務不履行の責任があることを「帰責事由がある」といいます。帰責事由とは一般的に、債務者の故意・過失による事由、またはこれと同視される事由のことを指すと考えられています。過失は、予見可能性の有無(債務不履行の原因となった事由を予測できたか否か)と結果回避可能性の有無(予見可能性があることを前提として、債務不履行となることを回避できたか否か)とで判断されます。

「無過失」は、予見可能性がないことや、予見可能性があったとしても結果回避可能性がないことを意味します。なお、過失がなければ(無過失)、当然「故意」もありません。

不可抗力にあたるか

契約で不可抗力を定めることがあるときは、不可抗力の例として、一定の事情を挙げることが多いです。

ほとんどの契約で天災(地震や水害など)は不可抗力の例として挙がっています。それに対して、「疫病」は不可抗力の例として挙がっている場合もあれば、挙がっていない場合もあります。仮に、契約上「疫病」が不可抗力の例として挙がっていれば、新型コロナウイルスの流行は不可抗力に当たると判断される可能性が高そうです。

契約で「疫病」が不可抗力の例として挙がっていない場合であっても、すでに述べた不可抗力の定義からすると、新型コロナウイルスの流行は、不可抗力に当たる可能性が高そうです。新型コロナウイルスは人力ではどうしようもないこと(人力でどうにかできれば、既に終息していると思われます)でしょうし、一会社の注意や予防方法によってどうにかなるものでもないと考えられます。

以上のことからすると、新型コロナウイルスの流行は不可抗力と判断される可能性は高いといえます。ただし、現時点では確定的なことはいえず、今後、新型コロナウイルスの流行が不可抗力と判断されるかは、裁判例の集積を待つしかありません。

無過失に当たるか

では、新型コロナウイルスの流行によって債務不履行をした場合、無過失といえるのでしょうか。

過失の有無を判断するに当たっては、契約の内容、債務不履行の態様のほか、契約の性質、契約の目的、契約締結に至った経緯、社会通念などを考慮に入れます。つまりは、予見可能性や結果回避可能性の有無を検討するに当たって、上記の事情を考慮したうえで結論を出すということになります。

今般の新型コロナウイルスの流行は、未曽有の事態といえ、予見可能性を肯定するのは難しそうです。そのことからすれば、新型コロナウイルスの流行によって債務不履行をした場合、無過失といえる可能性が高そうです。

ただし、不可抗力の場合と同様に、現時点では確定的なことはいえず、今後、新型コロナウイルスの流行による債務不履行が無過失と判断されるかは、裁判例の集積を待つしかありません。

新型コロナウイルスの流行が不可抗力、新型コロナウイルスの流行による債務不履行が無過失といえる可能性が高いといっても、債務不履行をした契約当事者の債務不履行が新型コロナウイルスの流行に起因するものでなければ、責任は免れません。

例えば建築業者がアパート建築を受注したものの、当初から部材を仕入れることができなかったにもかかわらず、「新型コロナウイルスが流行したためにアパート建築ができない」といった場合、それは不可抗力、無過失と判断することはできません。

つまり、債務不履行がどのような事情で発生したのか、新型コロナウイルスの流行によって債務不履行となったのかといった事情を、債務不履行をした契約当事者が立証しなければならないのです。

この点は、損害賠償請求において、非常に重要な点となってきます。

これらのことからすると、新型コロナウイルスの流行を原因として建築工事が中断・遅延した場合は、不可抗力または無過失と判断される可能性が高いと考えられ、損害賠償請求が認められない可能性が高いといえるでしょう。

ただし、当該債務不履行が、本当に新型コロナウイルスの流行が原因であるかは、明確にしておく必要があると考えられます。

基本的には、不可抗力・無過失は、建築業者が立証する立場です。不動産オーナーとすれば、建築業者から説明・資料をもらうということになります。

契約時点では請負工事を履行できる体制であったこと(あくまで予定ではありますが、いついつに部材を仕入れることができて、きちんと人を集めることができるなど)や、新型コロナの影響によって請負工事を履行できなくなったこと(契約締結後に、仕入れられるはずの部材が仕入れられなくなった、事業所の閉鎖などで人が集められなくなったなど)という点についてが、因果関係立証の際のポイントでしょう。

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