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2021.11.14

いつ「法人化」すべき? 見極めに必要な6つのポイント

不動産投資における法人化の最大のメリットは、今まで個人で受け取っていた家賃収入が法人の家賃収入となるため、「所得を個人から法人に移転できる」という点です。

個人の所得税は、所得が大きくなればなるほど税率が高くなる「超過累進税率」です。

一方、法人税は所得が800万円を超えると税率が一定になります。個人で不動産投資をやっていて、規模が大きくなってくると所得が多く(=税率が高く)なります。そのような大家さんが所得を法人に移転できれば、低い税率に抑えることができるというわけです。

個人と法人の税率の違い。所得が高くなるほど、法人化のメリットも大きくなる(表は資本金1億円以下の普通法人の法人税率)

ただし、法人化は書類一枚で簡単にできるというわけではありません。法人化を検討する場合は「そもそも今、自分は法人化できる状態なのか?」ということを考えなくてはならないのです。

特に重要になるのが、すでに物件を所有している個人のオーナーさんは「物件移転のタイミング」を見極める必要があるということ。

これまで個人で不動産投資を行っていたオーナーが法人化をする場合、所有している物件の名義を個人から法人に移転しなければなりません。物件の移転は通常、法人への物件売却という形をとります。ただし後述するように、売却したくてもできない場合があります。また、売却のタイミングを誤ると、余計な税金やコストがかかってしまう恐れもあるのです。

以降では、「いま、法人化しても大丈夫なのか?」を判断するための基準についてお話していきたいと思います。

判断基準は「物件が移転できるか」

以下の図は、すでに物件を所有している個人のオーナーさんが法人化を検討する際のフローチャートです。判断基準の1~6をクリアできれば法人化して問題ない、ということになります。

6つの判断基準について触れる前に、まずは図右側にある法人の種類について説明しておきましょう。法人化には主に次の方法があります。

「土地・建物所有法人」と「建物所有法人」
個人が所有する土地・建物をすべて法人に移転させるのが「土地建物所有法人」、土地は個人所有のままで、建物だけを法人に移転させるのが「建物所有法人」です。

どちらの場合も入居者は法人と賃貸借契約を結び、物件の賃料も法人が受け取ります。オーナー(個人)は役員報酬などの形で収入を得るかたちになります。この2つをどう使い分けるかについては後述しますので、ここでは「こういう方法があるんだな」ということだけ理解しておいてください。

土地・建物所有法人(上)では、建物と土地の両方を法人が所有する。建物所有法人(下)では、建物のみを法人所有とし、土地は個人が所有する

ちなみに両者の大きな違いは、建物所有法人の場合、土地が個人、建物が法人の所有となるため借地権が発生し、法人がオーナー(個人)に対し、権利金を支払わなければならない点です。

この借地権を発生させないようにするため、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出するという方法があります。この届出をすることで、お互いに借地権を発生させないことを了承して、土地を利用していることを明示することができます。

サブリース法人
物件を移転せず、法人が個人から一括借り上げする方法です。法人が直接入居者と賃貸借契約を結び、賃料も法人が受け取ります。

サブリース法人の場合、土地も建物も個人が所有し、賃料の8割程度をオーナー(個人)に支払う

これも詳細は後述しますが、個人から物件を売却できない場合、サブリース法人とすることでメリットが生じることがあります。

いま法人化できる? 6つのチェックポイント

法人の種類を整理したところで、ここからは先ほど紹介したフローチャートの左側にある6つのチェックポイントに沿って、物件を移転できるかどうかをどうやって判断するのか解説していきます。

1.時価(売却金額)>残債となっているか

個人から法人への物件売却にあたり、残債がある場合には個人の借入金を法人で借り換える必要があります。法人で新たな融資を受けて、個人から法人へ物件を売却し、その売却代金で個人は既存の借入金を返済するのです。

売却金額が既存の借入金残高を上回っていないと、個人の借入金が残ってしまうため、売却は難しくなります。残った借入金は個人が一括返済することになるからです。

上図のように、借入金残高9000万円の物件を、売却金額1億円で移転しようとする場合、売却金額が上回っているため売却は可能です。

なお、個人と法人の間での売却金額は「時価」としなければなりません。時価より低い金額で売却した場合でも、税務上は時価で譲渡したものとみなして取り扱われます。売却金額=時価となりますので、法人化するためには「物件の時価>借入金の残高」となっている必要があるのです。

なお税法上、「時価」は明確に定義されていませんが、このケースは同族間売買であるため、税務署に対して時価である根拠を示せるようにしておく必要があります。

一番確実な方法は、不動産鑑定士に鑑定してもらった評価額を売却金額とすることです。そのほかでは、土地については、固定資産税評価額を70%で割り戻した金額や路線価を80%で割り戻した金額を時価とする方法があげられます。

2.譲渡税がどれだけ発生するか

売却金額が簿価金額(取得価額から、今までの減価償却分を控除した金額)を上回ると売却益が発生し、譲渡税が課税されます。法人化にあたっては、この譲渡税がどれくらいかかるのかを把握しておく必要があります。

たとえば物件の簿価が7000万円だった場合、売却金額1億円との差額3000万円に対して譲渡税が課税されます。上図の例の場合、長期譲渡なら約600万円、短期譲渡なら約1200万円です。なお、「売却金額≦簿価金額」であれば、譲渡税はかかりません。

3.一括返済で違約金は発生しないか

既存の借入金が固定金利の場合には、一括返済することで違約金がかかる場合があります。違約金がかかるかどうかは、金銭消費貸借契約書に記載されているので必ずご確認ください。

違約金の条件は金融機関によって異なりますが、違約金が高額だと、法人への移転を断念せざるを得ないかもしれません。

4.移転費用を回収できるか?

物件を法人へ移転する際には、登記費用や不動産取得税がかかります。2020年時点では下記のようになっています。

建物を移転する場合
登録免許税…建物の固定資産税評価額×2%
不動産取得税…建物の固定資産税評価額×3%(住宅以外は4%)

土地を移転する場合
登録免許税…土地の固定資産税評価額×1.5%(売買の場合)
不動産取得税…土地の固定資産税評価額×1/2×3%(宅地の場合)

土地を移転する場合
登録免許税…債権金額×0.4%

また、登記を司法書士に依頼する場合、司法書士報酬が別途発生します。移転する物件数など個別の状況により異なりますが、10万円から15万円ほどはかかるでしょう。これらを合計すると高額になる可能性があります。法人化による毎年の節税額とこの移転費用を比べて、何年で回収できるのかが法人化の判断要素になります。

なお、移転費用が高額の場合には、土地と建物両方の移転ではなく、建物のみを移転する「建物所有法人」が有効です。建物のみの移転であれば、土地移転に伴う登録免許税、不動産取得税が発生しないためです。ただし、土地の借入金が残っている場合は法人への借換えが必要ですので、建物のみの移転はできないと思います。

5.消費税の課税事業者になっていないか

土地の売却は非課税ですが、建物の売却は課税取引になります。前回の記事で解説したように、法人に物件を売却した年に課税事業者になっていたならば、建物の売却代金にかかる消費税を納税しなければなりません。消費税を納税したとしても、それ以上に今年法人化するメリットがあるかを検討する必要があります。

また、売却した年が免税事業者であっても、建物の売却代金が1000万円を超えていた場合には、2年後に課税事業者となります。2年後に別の物件を売却する場合には、建物の売却代金に消費税が課税されることになるので注意が必要です。

6.相続までの期間に余裕はあるか

法人化は、相続税の節税になるという側面もあります。

物件を個人から法人に移転すると、家賃収入はすべて法人の収入となります。これにより個人の財産が増加しなくなり、相続税も抑えられるというわけです。

もちろん、その会社の株式を所有していれば、株式に対して相続税がかかることになりますが、不動産より株式の形で所有した方が、一般的には相続税の評価は下がります。

ただし、「物件を法人へ移転してから3年以内に相続が発生する」可能性がある場合は注意が必要です。この場合、会社の株式評価の計算上、法人が所有する不動産は「時価」で評価され、相続税が高くなる可能性があります。

また、個人からみると、物件を法人に移転することによって不動産は減ることになりますが、売却代金という現金が増えることになります。通常は、現金よりも不動産を所有している方が評価が低くなるため、わざわざ評価の低い不動産を評価の高い現金に変えたことになります。

したがって、法人に物件移転した後は、売却代金として受け取った現金をいかに減らすかという対策を進めていかなければなりません。相続までの期間に余裕があれば対策をとれますが、相続までの期間に余裕がない場合には、一時的に増えた財産を減らすことができず、結果的に高い相続税となるリスクがあります。

移転できない場合はサブリース法人を検討する

1~6により物件を移転するのが難しい場合には、自らの法人へのサブリースが考えられます。

これは、法人が個人から物件を一括借り上げし、法人が直接入居者と賃貸借契約を結びます。法人は空室リスクを負うことになるため、法人から個人に支払う家賃は入居者からもらう家賃より低い金額で設定するようにします。その家賃の差額分が法人の収入となり、個人から法人に所得を移転させることができます。

この場合、借り上げ賃料として個人に支払う金額は、満室賃料の80%程度が限度となります。つまり、法人に移せる収入は、家賃収入の20%程度が限度です。それ以上の収入を法人に移転すると税務署から高すぎると指摘を受ける可能性があります。

法人に移転できる所得が少ないため、節税メリットは少ないのですが、物件を法人に売却する必要がないため、譲渡税や移転費用は発生しません。また、借り換えの必要がありませんので、借入金がかなり残っているため、物件の移転が難しい場合にも活用できます。

まずはサブリース法人を設立して所得移転をすすめ、借入金の残高が時価を下回ったところで法人への物件移転を実行するというやり方も考えられます。

まとめ

法人化のご相談は多くいただくのですが、ここまでに解説したチェックポイントをクリアできず、物件を移転したくてもできないケースがよく見受けられます。その場合には、まずは「サブリース法人」の活用をおすすめしています。

また、今後物件を増やしていこうと思われる方は、あとになってから法人に物件を移転しようと思っても、残債を法人で借り換える必要がありますし、登記費用や不動産取得税などの費用もかかります。いずれ法人に移転するなら、最初から法人で購入した方が費用をおさえられることがあります。

ただし、法人にすることで税務手続きが複雑になり、税理士に依頼するための報酬が発生したり、社会保険に加入しなければならないなど、税金以外のコストが発生する可能性がある点にはご注意ください。

実際に法人化を実施する際には、個々の事情により判断が変わる可能性がありますので、税理士などの専門家にご相談されたうえで判断することをおすすめいたします。

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