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2021.10.03

融資引き締めの今、「不動産M&A」に注目すべき理由

個人投資家が「不動産投資をM&Aで行う」という事例が少しずつ注目を浴びるようになってきました。

不動産投資の世界でもM&Aは活用されてきましたが、最近はM&Aのマッチングサイトも増え、個人向けの不動産投資案件(主に民泊ですが)も掲載されるようになってきています。そこで今回は、「不動産投資とM&A」というテーマを取り上げたいと思います。

不動産M&Aとは?

M&A(エムアンドエー)とは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略です。意味は企業の合併・買収のこと。複数の企業が合併したり、ある会社が他の会社を買収したりすることを指します。みなさんも一度はニュースなどで目にしたことがあるでしょう。

通常のM&Aの目的は、事業や法人そのものを手に入れることです。他社が持っている販路やブランド、製造ノウハウなど、イチから作り上げていくと時間がかかるものを手に入れたいときに行われます。

こうしたM&Aのうち、買収される側の企業が持っている不動産を手に入れることを主目的としたM&Aは「不動産M&A」と呼ばれます。

不動産M&Aは相手の企業を買収することが主目的ではなく、あくまでも不動産取引の一形態という位置付けになります。

最大のメリットは「節税」

では、なぜわざわざ不動産取引をM&Aで行うのでしょうか。理由は簡単で、「節税効果が高い」からです。

例えば、ある法人が保有する不動産をそのまま普通に売却したとしましょう。その場合、不動産売却益に対して法人税(30~40%程度)がかかります。またこの税金を納めた後、経営者である個人が法人から(配当などとして)資金を回収しようとすると、最大で45%の所得税が徴収されます。経営者の手元には売却益の30~40%しか残らないこともあるのです。

一方で、株式の譲渡益には約20%の税金がかかるだけであり、法人税などの課税はありません。

売主側にこのような税務メリットがあるわけですから、買い主側は「会社丸ごと買いますよ、その方があなたの手取り額が増えてお得です」と提案を行い、相場よりも低い水準で不動産を手に入れることができる可能性もあるでしょう。

さらに、不動産M&Aは実際に不動産の取引を行っているわけではないので、買い主側にとっては登録免許税や不動産取得税、印紙税、そして登記関連費用がかからないというメリットも生まれます。

買い主側のリスクも把握しておく

上述の通り不動産M&Aにはメリットがあります。一方、買主側にとってみればリスクもあります。代表的なものを3つ挙げておきます。

1.会社の負債や債務も引き継ぐ
会社を丸ごと買うのですから、会社の資産のみならず、負債もしくは債務も引き継ぐことになります。もちろん、決算書には表れていない債務(簿外債務)も引き継ぐことになります。未払金や本当は回収の見込みがない売掛金、従業員がいるのであれば未払い給与、もちろん訴訟リスクもあります。それらのリスクも引き受けるのが不動産M&Aです。

2.手間がかかる
上記のようなリスクを回避するためにも、買主側は慎重に調査をしなければなりません。これは売主側から見ると、単に不動産を売りたいだけなのに、売却完了までに想定よりも時間がかかるということになるかもしれません。買主から見ても同様でしょう。つまり、不動産M&Aは手間がかかるのです。

3.将来の税負担を引き継ぐことになる
不動産M&Aによって実質的に売却される不動産に多額の「含み益」がある場合には、この含み益への課税が先送りになり、買主が負担せざるを得なくなるという問題も出てきます。

通常の不動産売買であれば、含み益のある不動産を売却した際、売主側が利益に相当する法人税等を納税することになります。

一方、不動産M&Aの場合は、不動産を実際には売却していないため、不動産売却の利益が顕在化しません。本来は売主側の企業が売却益の納税をすべきだったところを、買主側が会社を購入したことで、納税負担を引き継いだような形になります。つまり、買主側が最終的に外部の第三者に当該不動産を売却したいと考えているのであれば、買主側はこの含み益分の納税についてのリスクも考えておかなければなりませんし、不動産M&Aの買収金額に反映させるべきでしょう

このように不動産M&Aには、リスク、デメリットもあるということは認識しておいた方が良いでしょう。

不動産M&Aの知識は武器になる

不動産M&Aを使う最も良い事例は、後継者がおらず会社を清算したい、と考えるような不動産賃貸業の経営者から不動産M&Aで株式を購入する案件でしょう。しかし、このような案件に出会う可能性は少ないのではないでしょうか。

先述したとおり、不動産M&Aには税務上、多大なメリットがあります。不動産の買い手として不動産M&Aのノウハウを積めば、売主に交渉する1つの武器になります。売買価格ではなく、売主の手元に残るおカネという観点で、強力な交渉材料になる可能性が高いのです。

魅力のある不動産を企業として保有している売り手がいるのであれば、購入者側から不動産M&Aを提案するのも良いでしょう。

ここでは詳細な説明は割愛しますが、不動産だけが欲しいのであれば、売主側に会社を分割してもらい、不動産だけを保有する会社の株式だけを購入するという方法もあります。不動産M&Aは契約締結まで時間がかかりますが、売主にとっても買主にとっても良い取引となることも多いのです。

金融機関は不動産M&Aにお金を貸すのか?

買い手側にとっては、不動産M&Aの購入資金にかかる融資を銀行が出すかどうかは大きなポイントでしょう。

銀行員の視点から、筆者は、収益不動産用融資、いわゆるアパートローンよりは不動産M&Aの方がまだ融資を受けやすいのではないかと考えます。ただし「今の環境下において」という注釈が付きます。

かぼちゃの馬車事件以降、アパートローンを銀行から個人が調達するのは非常にハードルが高くなりました。そして現在はコロナの影響もあり、さらにアパートローンを採り上げる銀行は減少してきているものと思われます(銀行は企業の資金繰り支援を優先しています)。

では、アパートローンで融資を受けられないのに、なぜ同じ経済効果である不動産M&Aでの融資の方が融資を受けやすいと言えるのでしょうか。

これは、銀行の内部事情が影響しています。

アパートローンは多くの銀行で制度化、もしくは定型化されています。すなわち、アパートローンは承認の条件があらかじめ本部主導で決められています。その条件を満たしていなければ、基本的に融資実行は承認されません。

一方で、条件を満たしているのであれば、よほどの事情がない限りは融資実行の稟議が認められるのです。かぼちゃの馬車事件以降は、この条件を非常に厳しくした銀行が多数と思われ、そもそも制度化をやめた銀行も存在するでしょう。銀行の本部が「アパートローンをやらない」もしくは「アパートローンを慎重に採り上げる」という方針を出し、その条件を厳しくしたら、いっせいに融資の「蛇口」は閉まるのです。

一方で、不動産M&Aの融資は定型化されていないでしょう。M&A資金もしくは株式購入資金として審査されることになります。要するに、個別事情がきちんと勘案されるのです。特に不動産M&Aで購入したい会社の業績が堅調であれば、不動産賃貸業は業績が読みやすいこともあって銀行は融資を出そうと判断する可能性があります。

支店に融資判断の裁量があれば、さらに融資を受けられる可能性は高まるかもしれません。もちろん、ポイントとなるのは、投資利回りがきちんと確保できる不動産を対象としたM&Aかどうかという点です。きちんと安定的に、相応の利回りが確保できる不動産であるならば、銀行員は稟議を書きやすいのです。

さらに新たに事業を始める方であれば、日本政策金融公庫の新創業融資制度のような制度融資を使うことができる可能性もあるでしょう。

公的金融機関も銀行も、ベンチャーへの資金供給や創業支援を実績として誇りたいという思いがあります。担当する支店でも、同様の目標が課されているでしょう。

ただ、このようなコロナ環境下では、創業しようという人はあまり多くないかもしれません。また創業する個人はいても、銀行として融資をしたいとは思えない事業計画かもしれません。しかし、繰り返しになりますが、不動産M&A、すなわち実質的な不動産賃貸案件は、審査が行いやすいのです。銀行が乗ってくる可能性はあります。

不動産M&Aは、有効に活用すれば不動産投資家にとって非常に良い武器となる可能性があります。そして、今の環境下では銀行からの融資をアパートローンとは異なる形で引き出すことができる可能性があります。不動産M&Aを一度真剣に検討してみるのも、不動産投資家にとって有用かもしれません。

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