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2021.09.18

アパートローン審査、銀行員はココを見ている

そもそもアパートローンとは何なのか、銀行と銀行員の行動原理について確認しました。

今回は、アパートローンの相談を受けた時に銀行員が行う最初の確認事項などについて、銀行員の目線から解説していきます。

アパートローン「2つの型」

まず知っておいていただきたいのは、銀行がアパートローンを審査する際に最初に見るのは、アパートローンの「型」だということです。

銀行のアパートローンと一口に言っても、大きく2つの型に分かれます。

昔から銀行が得意とするのは、不動産の有効活用案件、つまり地主向けに「建物の建築資金」を融資するタイプのアパートローンです。この場合、土地取得資金は融資の対象になりません。これが1つ目の型です。ここでは「昔ながらのアパートローン」と呼びましょう。

そしてもう1つの型が、「不動産投資ローン」とか、「不動産事業ローン」と言われるような「土地と建物の取得費用」を融資の対象とするアパートローンです。

昔ながらのアパートローンの場合、地主がすでに所有している土地を有効活用するために、建物の建築主が借り入れます。この時に、ちゃっかりと銀行は土地も担保に取ります。建物建築資金でありながら土地の価値も押さえるので、銀行としてはリスクの低い融資となります。

一方で、土地・建物の取得資金を融資する場合には、融資額が大きくなりますので、銀行としてはリスクの高い融資になります。

対象となる土地・建物によって生み出される不動産賃貸事業がうまくいかなければ、銀行は貸し倒れのリスクを大きく負うことにもなります。不動産賃貸事業を新規に始めようと考える個人の多くは、地主ではないでしょう。土地・建物を借り入れた資金で取得しようとする場合には、銀行からは当初からこうした目線で見られているということになります。

かぼちゃ以降は「相談ルート」も重視

どのようなルートでアパートローンの相談が来たのかについても、銀行員はチェックしています。かぼちゃの馬車事件以降、不動産業者から持ち込まれた案件についての目線が厳しくなっているということです。

特に土地・建物を対象とする不動産投資ローンの融資案件の中には、不動産業者が個人や企業を勧誘し、銀行に紹介案件として持ち込んでくるものがあります。

このような案件は、借入人となる個人などが主導しているというよりは、不動産業者が主導している案件が多く、借入人が不動産業者任せで事業運営能力に欠けていることもあります。

不動産業者の風評、実績などについては、今まで以上に銀行はしっかりと見ているのです。通常の銀行であれば、不動産業者のリストを作成し、過去に持ち込まれた案件がどのようなものだったのか含めて不動産業者についての評価をつけているでしょう。

借入人個人の属性もチェック

当然、借入人個人の属性についてもチェックをします。

基本的な内容としては、借入人の資産や収入です。かぼちゃの馬車事件以降はどの銀行でも、預金残高などの確認資料は原本を求めるはずです(ネット銀行の場合は、目の前でログインしてもらい、直接画面で確認することになります)。

また最近では、1物件1法人スキームような仕組みで実際には多額の債務があるのではないかといった点についてもチェックしています。反社会的勢力ではないかについても当然ながらチェックします。

銀行が「社会の敵」にならないための審査も

その他には、銀行自身が社会から敵と見られないための確認事項もあります。

銀行を取り巻く環境は、かぼちゃの馬車事件以降大きく変わってきています。前回の記事でお伝えしたように、銀行は嫌われる業種であるだけに、社会の敵となることを恐れています。そのため、金融庁が言う「顧客本位の業務運営」という用語を使いながら、顧客保護を重視する姿勢を取っています。

この顧客本位、あるいは顧客保護という観点で、銀行はアパートローンの審査で以下の点を重視するようになってきています。

[1]紹介してきた不動産業者は適切な業者であるのか
⇒業歴や風評に加え、財務状況、顧客への説明資料をチェック

[2]顧客の理解度、当事者意識
⇒借入人となる顧客本人に、可能な限り早期に面談する
⇒不動産業者のいいなりになっていないか、不動産賃貸業のリスクを認識しているかチェック

[3]物件の売買価格の妥当性
⇒借入人が購入を検討している物件の売買価格が妥当か

[4]借入人の資産背景との比較
⇒借入人が物件価値のみならず、保有資産・収入に比して多額の借り入れを負うことにならないかチェック

このような観点で、初期にアパートローン案件の申し込み内容をチェックすることで、銀行は顧客保護とともに、社会の敵となることを防止しようとしています。簡単に言えば、あとから問題になりそうな案件を入り口でシャットダウンするというやり方です。

消費者金融と銀行、戦略の違い

少し余談になりますが、「社会の敵」となることを避けるか否かは、消費者金融と銀行の営業戦略の違いであると筆者は考えています。

消費者金融は、入り口では簡単にお金を貸します。そのため、返済できない個人が続出しますが、それを高い金利でカバ―してきました。

以前、グレーゾーン金利が存在していた時代には、消費者金融は約29%程度の金利で多数の個人に貸出を行っていました。この金利だと、消費者金融会社の運営コストなどを考えずに非常にざっくりと言えば、4人に1人が返せなくなっても消費者金融会社は損をしません。「100%÷4人=25%<貸出金利29%」となるからです(返済不能者が支払うはずだった金利については考慮外)。

消費者金融は、銀行のように預金の預入を受けることはなく、あまり社会的な評判を気にする必要がなかったので、延滞した顧客には厳しい取り立てを行いました。ただし、気軽に借り入れてもらう必要はあったので、ダンスのCMや、宇宙人が登場するCMが大量に流され、カジュアルなイメージ作りがなされました。

そしてその結果として、多額の利益を上げてきた消費者金融は、多重債務者を生み出す社会から敵と徐々にみなされるようになり、グレーゾーン金利は撤廃され、過払い返還請求が続々となされ、企業単独での存続が難しくなるところまで追い込まれました。実際に破綻した企業もあります。

一方で、銀行の営業戦略はこれとは異なります。

銀行は社会問題化することを避けます。それが自分達が生き残る道だと本能的に分かっているのでしょう。後から問題になりそうな融資を行うことを極端に避けます。そのため、低い金利でも良いからほぼ確実に返済が見込まれる借入人にしか融資を行わないのです。

近年は消費者金融の市場を侵食し、カードローン事業を行うようになりましたが、このカードローンは消費者金融会社が保証を行っています。そのため、貸出が延滞するなどした場合には、銀行ではなく消費者金融会社が対応しています。

このようにして、銀行は社会の敵になることを回避して、日本という社会では生き残ってきていると筆者は理解しています。

銀行村を飛び出したスルガ銀行

ここで銀行という「村」を飛び出したのが、静岡を地盤とするスルガ銀行でした。日本には、低い金利だけどなかなか貸してくれない銀行か、すぐに貸してくれるけど金利が高い消費者金融しかなく、中間部分が抜け落ちていると言われることがありますが、スルガ銀行は、この中間ゾーンを狙った銀行です。

個人のアパートローンを狙い、金利はある程度高いが、審査スピードの速さを武器に業績を伸ばしました。

ただ、スルガ銀行のやり方は、社会問題化してしまいました。一時はスルガ銀行はもてはやされましたが、結局は社会の敵のような扱いとなっています。このような流れを見ると、日本では「堅く、小儲けしていく」ぐらいでなければ、銀行は生き残れないのかもしれません。

銀行は、だからこそ顧客保護を唱え、簡単には融資を行おうとしません。借入人からするともどかしいと思うことは多々あるでしょう。借り入れを行おうと考えている時、銀行からストップをかけられても「余計なお世話」だと思うことも多いのではないでしょうか。

筆者も余計なお世話だと思います。しかし、銀行側から見ると、この銀行の「余計なお世話」の対応は正しいのかもしれないのです。少し歴史を考えてみると、筆者は銀行の生き残り戦略、すなわち「社会の敵にならない」というのは、日本においては正しかったように思います。

ただ、現在の銀行は、低金利にあえぎ、収益的には完全に追い詰められつつあります。少しぐらい社会の敵になってもリスクを取って収益を上げようとする銀行はこれから出てくるでしょう。特に地元に貸出先が限られる地銀では、相応のボリュームと金利収入が見込めるアパートローンを強化せざるを得なくなるでしょう。

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