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2021.05.11

アパート融資にも影響!不動産投資家が押さえるべき改正民法の要点

2020年4月、約120年ぶりに全面改正された民法が施行され、債権法において買い主・借り主の権利が強化されることとなりました。不動産投資家にとっては、アパート融資や売買、賃貸借契約などに関わる部分が多いため、内容を正しく把握しておくことが必要です。

今回は不動産投資家が特に押さえておくべき改正民法の要点と、アパート融資に与える影響について見ていきます。

連帯保証人制度の改正

改正民法では、個人による保証の要件が厳格化されています。
従来の旧民法下では、事業に関与していない第三者がその重要性を理解しないまま安易に連帯保証人を引き受けてしまい、想定以上の債務を背負うリスクが問題点として指摘されていました。
こうした事態に対応するべく、主に以下のような3つの改正がなされています。

極度額設定のない個人の保証契約は無効に

改正民法では、個人の連帯保証には債務範囲を明確にする極度額(上限額)の設定が必要になり、極度額のない根保証契約は無効となりました。
根保証契約とは、実際どれくらいの金額を保証しなければならないかが契約時にはっきりとは分からない保証契約のことです。

旧民法では賃借人の一切の債務を連帯保証人に負わせる根保証契約が可能でしたが、改正民法下では「○○円」のように、極度額を書面で明確に定めなければなりません。

公証人による保証意思確認手続きが必要に

事業用融資において事業に携わらない個人を連帯保証人にするには、事前に公証人に保証引き受けの意思を示す手続き(公証人による保証意思確認手続)が必要になりました。

保証意思確認とは、保証人になろうとする人が自ら公証役場に出向き、「保証意思宣明公正証書」を作成してもらうという手続きです。公証人から債務の内容や保証人となることのリスクを理解しているかなどの確認を受けた上で、証書に署名・捺印を行います。

意思確認が必要な保証契約の場合、契約締結日前1ヶ月以内に作成された証書の差し入れが必要です。保証意思確認なしに行われた保証契約は無効になります。

保証人に対する財務状況の情報提供義務の新設

債務者は、保証人に対して財務状況の情報提供を行う義務についても定められました。
債務者の財政や収支状況、保証人を依頼しようとしている事業以外に抱えている債務があれば、それらの情報についても必ず保証人に提供しなければなりません。

連帯保証人制度の改正がアパート融資に与える影響

こうした保証人制度の改正により、アパート融資の手続きや取り扱いにもさまざまな変化が生じています。改正民法施行に伴うアパート融資の変化について見ていきましょう。

連帯保証人は原則不要の流れに

これまでのアパート融資では、連帯保証人に法定相続人を指定することで、債務者死亡の際に債務を法定相続人に引き継いでいました。相続放棄により債務が回収不能とならないようにすることがその目的です。

民法改正後も、保証意思確認を行えばこれまでのように法定相続人を連帯保証人にすることができますが、手続きが非常に煩雑になります。そのためメガバンクでは、いち早く原則保証人不要で融資を行うことを表明し、他の銀行も追随することとなりました。
現在アパート融資においては、原則連帯保証人不要という取扱いが主流になっています。ただし審査の結果によっては、これまで通り法定相続人1名以上の連帯保証人を取るケースもあるようです。

連帯保証人設定の代わりとして、団信加入を求めるアパートローンもあります。
もし団信加入ができない場合には、法定相続人の連帯保証人設定および団信不加入に関する念書の差し入れを求められることが多いです。年齢やその他の理由により団信加入ができない場合には、保証人設定の手続きにこれまでよりも手間がかかりますので注意しましょう。

保証意思確認手続きなしで連帯保証人が立てられるケース

法定相続人が共に事業に参加している場合には、これまで通り保証意思確認手続きなしで連帯保証人になることができます。例えば、不動産が共有名義の場合には事業に関係しているとみなされるため、従来と保証手続きは変わりません。
保証意思確認手続きが必要とされないのは以下のケースです。

主債務者が個人の場合
主債務者と共同して事業を行っている共同事業者
主債務者の事業に従事している主債務者の配偶者

主債務者が法人の場合
その法人の理事、取締役、執行役
議決権の過半数を持つ株主など

融資環境は厳しくなる傾向に……

連帯保証人を不要とすることは、金融機関にとっては債務の回収リスクが上がることになります。民法改正は、銀行など各金融機関の融資審査を厳しくさせる要因になると考えられるでしょう。

近年アパート融資においては、過剰融資や不正融資の問題を契機に、融資の引き締めが起こっています。さらには新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、金融機関は不動産融資に慎重な姿勢を見せています。

さまざまな背景が重なり合い、自己資金を多く投入することを求められたり、より高い担保価値のある物件でなければ審査に通らなかったりするなどの影響が考えられるでしょう。

「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変更

改正民法では、瑕疵担保責任が契約不適合責任となり、買い主の権利が大きく保護されることになりました。

追完請求権・代金減額請求権の追加

旧民法では、購入した物件に隠れた瑕疵があった場合、瑕疵を知った時点から1年間に限り売り主に損害賠償を請求することや、契約の目的が達成されない場合に限り契約を解除する権利が認められていました。

これらに加え、改正民法では
・交換や修繕を求める「追完請求権」
・追完請求に応じてもらえない場合、代金の減額を求める「代金減額請求権」
これら2つの権利を行使することが可能になりました。

「隠れた瑕疵」かどうかは問われない

改正民法では、買い主が知っていた瑕疵であっても責任の対象になりました。つまり、契約解除などの権利を行使する条件に「隠れた瑕疵」であるかどうかは問われないということです。判断基準として「契約内容に適合しているかどうか」が重要となります。
また権利の行使については、契約不適合が明らかになってから1年以内に「通知」すればよく、売り主の悪意や重過失の場合には、期間の制限はありません。

不動産投資家にとっては、物件取得時のリスクが下がったといえるでしょう。しかし一方で、売り主となった際には責任の範囲が広がることになりました。
物件売却時には、専門家による現況調査などを行い、問題のある部分については契約内容としてしっかり明記することが大切です。また、瑕疵保険によってリスクをカバーすることも有効でしょう。

賃貸経営に関する改正点と影響

民法改正により、賃貸経営においても変更が生じています。すでに商習慣化しているものもありましたが、今回の改正により法的に明文化されました。
賃貸経営において特に注意したいポイントと、対処法を見ていきましょう。

敷金の返還について明確に定義

今回の民法改正において、敷金は賃料未払いなどの金銭債務を差し引いたうえで賃貸借終了時に返還しなければならないことが法的に明文化されています。

民法改正以前は、クリーニングなどの原状回復費用に敷金を利用し、賃借人には返還しない……という商習慣がよく見られていました。しかし改正以降は、賃借人に家賃滞納などがないにもかかわらず敷金を返還しない、ということは認められません。

原状回復義務の範囲

賃借人は、賃貸借契約解除時に原状回復義務を負うこととなっています。しかし通常使用範囲内の損傷であり、入居者の責任でない通常損耗・経年変化については、原状回復の義務がないことが明言されました。
通常損耗・経年劣化に含まれるもの・含まれないものは、以下のように分けることができます。

通常損耗・経年変化に該当する例
電化製品を設置していた後方の壁の黒ずみ
家具の設置跡
鍵の交換費用(紛失・破損を除く)
壁紙の自然変色

通常損耗・経年変化に該当しない例(賃借人が原状回復義務を負う)
タバコ・ペットに起因する臭いや汚れ・損傷
不適切な使用・故意による毀損

したがって、もし退去に伴うハウスクリーニング費用を賃借人負担としたい場合は、契約にその旨の特約を盛り込んでおかなければなりません。改正民法下でも特約は認められますが、合理的な理由があること、賃借人が特約を認識・合意していることなどが必要とされています。

修繕義務

旧民法では、建物や設備の損傷については賃貸人が修繕義務を負うという範囲でしか規定されていませんでした。また賃借人には修繕権がなく、勝手に修繕を行った場合には賃貸借契約解除の要因となることもあったわけです。

しかし今回の改正で、修繕要求に賃貸人が対応しない場合には、賃借人が自ら修繕を行うことが認められ、その費用を賃貸人に請求できることになりました。

そのため、賃貸人側としてはより迅速な修繕対応が求められることになります。また、修繕の必要性や範囲を巡るトラブルを防ぐために、特約で修繕の条件や範囲を取り決めておくなどの対処が必要となるでしょう。

設備不具合時の家賃減額

旧民法では、賃貸物件の一部が滅失するなどの理由により、賃借物の一部が使用不能となった場合、賃借人は家賃の減額を請求することが認められていました。賃貸人は、この請求があった場合に限り、家賃の減額に応じなければならなかったわけです。
しかし改正民法では、賃借物の一部の使用不能に対し、賃借人からの請求がなくても、賃貸人は家賃減額の義務を負うこととなっています。

さらに改正民法では、旧民法で定められていた不動産の一部の「滅失」という条件がなくなりました。故障や安全性の欠如などを含む「使用および収益ができない」状況であれば、家賃減額の対象となることに気を付けましょう。

家賃減額の範囲については明確な規定がないため、金額や日数について賃借人とトラブルになる可能性もあります。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会作成の「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」が目安として参考になりますので、あらかじめ契約書に盛り込んでおくとよいでしょう。

設備の不具合の場合、部品の調達や修理業者の手配などに予想以上の時間を要する場合もあります。減額期間が長引くと、収益にも影響を及ぼす可能性が高いです。
近い将来に不具合が発生しそうな古い設備などは、使用不能になるまで使おうとせず、入退去のタイミングを利用し適切なタイミングで入れ替えていく必要があるでしょう。

いち早く不具合を認知できるよう、普段から積極的に賃借人とコミュニケーションをとることも一つの対策になります。

賃貸借契約における改正民法の注意点と対応策

ここまでご説明してきた通り、民法改正はこれまでの賃貸経営にさまざまな変化と影響を与えています。賃貸物件のオーナーとしては、賃貸借契約に特に注意を払わなければなりません。
どのような点に気を付けて賃貸借契約を結ぶべきか、注意点と対応策を見ていきましょう。

適切な極度額の設定

先述の通り、個人の連帯保証契約には極度額(上限額)の設定・明記が必要となりました。どの程度の金額にするべきなのか、判断が難しいところです。
リスクを考えて極度額を高額にすることも可能ですが、それでは保証を引き受ける人が見つかりにくく、入居につながらない可能性があるでしょう。一方あまりにも低額だと、想定される債務を完全にカバーできず、保証の意味をなさなくなります。

連帯保証人の極度額については、国土交通省が取りまとめている「極度額に関する参考資料」を基に考えていくとよいでしょう。適切な極度額を設定することで、さまざまなリスクに対応できるようにしておかなければなりません。

特別の事情による保証の終了規定に注意

改正民法では、賃借人や保証人に一定の事由が生じた場合、その時点で債務の元本が確定するようになりました。つまり、債務者の死亡や保証人の死亡・破産などの特別の事情が発生した場合、その後生じた損失に対しては補償の対象外となります。
改正民法においては、従来のように連帯保証のみに頼っていてはじゅうぶんなリスク管理は難しいかもしれません。

家賃保証会社・家賃保証総合保険の活用を

先述の通り、改正民法において連帯保証を利用するには、極度額の設定や保障意思確認、財務状況の情報提供など、多くの手続きが必要になりました。
保証契約時だけでなく、保証期間中においても、連帯保証人から支払い・滞納などの状況照会があった場合、賃貸人は情報提供することが義務化されています。この情報提供を怠ると連帯保証契約が無効になるなど、これまでより連帯保証の利用に多くの手間がかかるようになりました。
また今回の改正は、全体的に買い主・借り主の権利が保護・強化される内容となっており、オーナーとしては注意しなければならないリスクが増えたともいえます。

そこで、家賃保証会社(賃貸保証会社)の利用や、大家向けの家賃保証総合保険の活用を検討してみるとよいでしょう。
これらを利用すれば、極度額を定める必要もなく、連帯保証人を立てずともいざという時のリスク対策になります。

まとめ

2020年4月施行の改正民法が不動産投資家に与える影響について、関わりの深い部分を抜粋して紹介しました。特に物件購入時に欠かせないアパート融資については、原則連帯保証人を不要としたことが、さらに融資の難化につながっているようです。
これから不動産投資を考えている場合には、以前にも増して自己資金をじゅうぶんに確保することが重要となるでしょう。

また今回の民法改正は、物件売買や賃貸借契約に関わる部分も多く、オーナーとして注意しなければならないポイントが数多く存在します。賃貸経営にあたり、賃借人とのトラブルを避け収益を最大化するためにも、しっかりと変更点を確認し、適切な対処を取れるようにしておきましょう。

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